研究概要 |
本研究の目的は,歯科用合金に対するレジンの接着性を高めるため,合金組成から検討し,合金と歯科用レジンを化学的に反応させて強固に接着させることであった。研究実績を以下に述べる。 試作合金は,母合金としてAuを20mass%含み,Pdを20,30,40mass%,Cuを10,15,20mass%に変化させ残りをAgとした多機能合金の開発で使用した9種の合金を選択した。これらの母合金にSn, Ga, Inをそれぞれ0,2,4mass%添加した合計63種の合金とした。歯科精密鋳造法により,接着強さ測定用の試料を作製した。As cast状態の接着強さ測定用の試料は,スーパーボンドC&Bをメーカー指示の方法で接着した。リン酸エステル系のレジンセメント-パナビアは,アロイプライマーを使用しメーカー指示の方法で接着した。 引張接着強さは,各条件で繰り返し3回測定した。スーパーボンドで接着した場合,母合金の接着強さは,33.1から42.5MPa, Sn添加合金は,35.9から45.9MPa, Ga添加合金は,38.4から44.1MPa, In添加合金は,42.2から47.3MPaに及んだ。アロイプライマーを使用しパナビアで接着した場合,母合金の接着強さは,21.8から41.6MPa, Sn添加合金は,19.4から43.2MPa, Ga添加合金は,18.1から33.9MPa, In添加合金は,18.6から42.9MPaに及んだ。 XPSを用いて接着前の試験片表面のAg, Pd, Cu, Sn, Ga, In元素の存在状態について調べた結果,すべての元素が酸化物を構成しており,Pd量Cu量と共に生成される酸化物の量もさまざまに変化していることが結合エネルギーより想像された。また,Sn, Ga, Inを添加した合金は,Ag, Pd, Cu,元素の酸化が抑制され添加元素が選択的に酸化されている事がわかった。
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