研究概要 |
分子の環構造上に重合反応性の二重結合を有すると思われる多環系モノマーをMMAに添加し,これにより得られるレジンの義歯床用材料としての可能性を検討するため,今回は多環系モノマーを添加したMMAを加熱重合することで得られたレジンの重合収縮率(体収縮)を比重法により評価した.このうち常温で固体として存在するモノマー,すなわちインダゾール,2-メチルインドール,3-メチルインドール,インドール-3-カルボン酸メチルの4種類のモノマーに関しては,MMAに対する溶解性に限界があるため,MMAに数mass%溶解し飽和させた程度の添加率では,MMAの重合収縮を有意に抑制する効果はみとめられなかった.ただし,MMAに対して5mass%の溶解性を示したPa型ベンゾオキサジンと,MMAに30〜40mass%溶解したクマリンおよび7-メチルインドールを添加した試料は,100℃に加熱しても重合反応を示さなかった.また,同様に常温で固体のInosine,3-イソブチル-1-メチルキサンチン,2',3'-o-Isopropylideneadenosine, Kinetine, MAVT,メラトニン,メトキサレン,6-METHOXYPURINEの8種類のモノマーは,MMAに対して1mass%以下の溶解性であった. これに対して,常温で液体のモノマーはMMAに任意の割合で溶解することができ,MMAの重合収縮を有効に抑制するものと考えられた.そこでインデン,クマロン,N-メチルインドールの3種類のモノマーを選び同様の実験を行ったところ,MMA:インデン=50:50の重量比で混合した場合,重合収縮率は18.63±0.76%となり,MMA単独で重合させた時(21.30±0.23%)に比べて有意に減少した.一方,後者2種類のモノマーを添加したMMAは,100℃に加熱しても重合反応を示さなかった.
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