研究概要 |
1.金銀パラジウム合金の口腔内における電位の経時的変化(実験中) 口腔内での金属修復物の腐食は,金属元素の溶出と深い関係にあり,アレルギー疾患の一因とされている.近年,口腔内で歯科用金属の粘膜に対する電位差を計測し,金属の溶出傾向を判定するDMAメーター(JS2002,デントインペックス社)が開発され,発売された.金銀パラジウム合金の口腔内における電位の経時的変化を知る目的で,部分床義歯装着患者10名の21装置(金銀パラジウム合金を用いた鋳造鉤およびリンガルバー)をDMAメーターにて測定した. 1)装着時の電位も個体差があった.装着時の電位は-92〜51mV,平均-9.0±35.6mVを示した. 2)装着後1ヵ月後には,1装置を除きすべての装置の電位は正となり,3〜176mVを示した.一般的に口腔内で金属修復物に生じる電位は,高くても200〜300mV程度と推察されており,本研究の値もこの範囲に入っていた.しかし,この時点でCuの溶出が認められていると推測され,耐食性の低下が開始されていると思われた. 2.熱処理の影響(論文を投稿) 12%金銀パラジウム合金を用いて1)800℃1時間係留後水中で急冷,2)800℃1時間係留後,室温で空冷3)熱処理なし,の3条件の鋳造鉤を用いた部分床義歯を10名に装着した.6カ月,1年後ともに急冷を行った方が熱処理なし,空冷に比べ輝度が高く有意差が認められたが,いずれも輝度は大幅に低下しており,今回行った溶体化処理では耐変が十分でないことが示唆された. 3.口腔内装着で変色した歯科用合金の表面分析(論文を投稿) 口腔内で変色した金銀パラジウム合金と純チタン表面のSPM観察では,120〜1200nmの球状の付着物に覆われていた.純チタンでは変色層の厚さ0.2〜0.5μmと推定されたが,金銀パラジウム合金では変色層の厚さは推定できなかった.
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