冷・熱恒温水槽、電磁弁6基、送液ポンプ2台、送液制御電気回路、送液ポンプおよび導電率計からなる試験装置を用い、まず装置の動作安定性を試験した。 熱サイクル周波数120cycle/hrで最高温度54℃、最低温度7℃の温度変化を2万回程度まで安定して負荷することかできた。ただ、電磁弁開閉の微妙なタイムラグのため、漏洩トレーサーとして用いた生理的食塩水の流量を冷水系、熱水系で平衡させることか難しく、当初予定していた100000cycle負荷を完全自動運転するには流量センサーによる送液ポンプの動作制御システムの開発が必要なことか示唆された。検出側循環液の導電率データ取得サイクルと熱サイクル負荷サイクルの同期性は良好で、またマイクロシリンジで0.4μlの生理的食塩水を人為的に導入して導電率変化応答を試験したところ、約10秒程度の遅れはあったもののほぼ一定の遅延で、導電率変化量は生理的食塩水導入量と良好な対応が認められ、当初の設計通りの性能を示した。 ウシ歯質試料を使用した歯科用コンポジットレジンの辺縁封鎖性測定にあたって、アクリル樹脂製透明試料ホルダーを使用したところ、従来得られていたデータのうち熱サイクル負荷数に対して上に凸な曲線を描く挙動が、試料辺縁検出側に付着した気泡によって漏洩トレーサー溶液が検出側循環液に遅れて溶解するためであることが判明した。気泡付着がないことを確認した試料では、すべて下に凸な漏洩挙動を示した。現段階のデータにおける初期漏洩挙動は、熱サイクル数の2次多項式で十分説明され、測定を継続するとじょじょに直線に漸近した。漸近する直線の傾きは2種のコンポジットレジンで得られた0.60μl/cycleと0.15μl/cycleであった。この傾きは辺縁に発生した定常間隙に比例すると考えられ、走査電子顕微鏡による試料観察によっても両者の関連性が示せた。
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