冷・熱恒温水槽、電磁弁6基、送液ポンプ2台、送液制御電気回路からなる温度変化負荷系と循環送液ポンプおよび導電率計からなる漏洩検出系で構成される試験装置を利用して、歯科用コンポジットレジン充填修復の辺縁封鎖性を測定評価した。 ウシ前歯唇面から切断と研磨によって取り出した縦横約8mm、厚さ2mmの歯質板を光硬化型樹脂で直径20mm、厚さ2mmの円盤状試料とし、歯質板に直径3mmの貫通円孔を設けて擬似窩洞とした。窩洞を酸処理後、歯科用光重合型コンポジットレジンを充填し、試料を完成させた。冷・熱生理的食塩水を交互に試料に接触させ、表面到達温度54℃と7℃間を毎分2cycleで試料に温度変化を与えた。熱サイクル周期に同期させて温度変化10周期ごとに漏洩検出側の導電率を測定した。 導電率が増加し始めてからの変化は、平方相関係数0.981〜0.999で負荷熱サイクル数に対して2次多項式で示すことができた。回帰2次多項式の熱サイクル軸切片から求めた漏洩開始熱サイクル数は3×10^4〜5×10^4程度で、平均4.0×10^4であった。コンポジットレジン充填に先立って窩洞を酸処理することによって、辺縁封鎖性は著しく向上することが再確認された。 漏洩開始初期には負荷熱サイクル数の2次関数的に導電率は増加するが、その後次第に負荷熱サイクル数に対して直線的な変化を示すようになった。これは辺縁で生じた微小間隙が次第に成長を止め、熱サイクルごとに一定の間隙を生じるためと考えられた。そこで得られたデータの最終部分を直線回帰してその傾きから定常漏洩速度を求めたところ、平均0.6μl/cycleとなり、発生した最終間隙量は窩縁酸処理の有無にあまり影響されないようであった。ただ、測定値のバラツキは大きく、0.3μl/cycle〜1.1μl/cycleと同種試料内でも3倍以上の違いがあった。
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