研究概要 |
欠損歯列患者の補綴処置については従来から天然正常歯列を目標として補緩装置の設計がなされてきた.一方,臨床的な経験により,少なくとも小臼歯までは完全に咬合を回復し,これにより下顎位の咬合接触による空間的位置付け(咬合支持)を回復出来れば顎機能は正常に保持され,また咀嚼能力の回復もほぼ正常に近く行えるのではないかと言う考え方も一部になされ,とくにオランダのKayserらは20年前よりこの様な考え方を「短縮歯列」(SDA ; Shortened Dental Arch)の実効性として推奨しているが,いまだ,EBMレベルでその実効性,適応性等を論じた研究がなされておらず,報告者等はこれまでの関連研究に基づき,欠損歯列者における顎機能の保持と短縮歯列および修復処置それぞれの有効性について検討を加えるため本研究を企画した. 13年度を通じ,これまでの研究結果より得られた実験的な欠損歯列再現被検者5名の結果を基本データとして採得し,より多数の健全歯列者における顎機能の状態を一定条件下で測定,解析する方向性を探った. これには多数の被検者において夜間睡眠中の咬合力の推移を測定可能であるような「スプリント上咬合力記録システム」の構築が必要かつ妥当と思われ、機器の整備を科学研究費により実行した。このシステムに基づく研究成果は14年度以降に具体化する。 以上と併行してこれまでの研究結果で示唆された下顎位を変位させるのに必用な咬合力の発現傾向について特に夜間睡眠中のブラキシズムとの関連において観察,測定を行いこれからの研究の方向生を探った. 今後の課題として、大学附属病院外来患者において上記に該当する欠損歯列者多数名において欠損状態と下顎機能の状態を臨床的に調査・評価し,どの様な条件の欠損歯列者で短縮歯列のコンセプトが適応となるか,否かの診断基準を求めることが課題となる.
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