研究概要 |
歯科用金属の中で溶出による影響がほとんど認められなかった6種類の金属粉末(Ti, Nb, Ta, Cr, Zr及びAl)を2種類の骨芽細胞様細胞(MG63およびHOS細胞)に4,7および14日間作用させ,細胞生存率及びALP活性に及ぼす影響を調べた.各金属粉末を作用させた場合のMG63細胞とHOS細胞の細胞生存率は異なっていた.すなわち,MG63細胞では,培養4日後において高濃度で細胞生存率の低下が認められたものの,作用濃度の低下とともに細胞生存率は上昇した.そして,低作用濃度の0.025mg/cm^2では,いずれの金属粉末も試料未添加の対照群に近いものとなった.金属粉末の比較ではAlが最も低く,次いでTi, Zrであった.Nb, TaおよびCrの間には有意差は認められなかった.一方,HOS細胞では,MG63細胞に比べて著しい細胞生存率の低下を示した.特に,Al, Ti及びZrでは平均で細胞生存率は約30%と著しい低下を示した.また,Alでは最低作用濃度の0.025mg/cm^2でも細胞生存率は平均で50%程度であった.培養日数の影響を見ると,いずれの細胞においても培養7日後の細胞生存率は培養4日後に比べて上昇した.ALP活性は培養4日後において上昇する傾向が認められたが,Alの高濃度においてのみ有意差が認められた.培養7日後及び14日後では対照群と有意差は認められなくなった.両細胞を比較すると,HOS細胞はMG63細胞に比べてALP発現が大きかった.以上の結果から,不動態化によって優れた耐食性を示す金属であっても粉末状になると,溶出とは異なった機構によって細胞生存率に影響を及ぼすことが明らかとなった.また,骨芽細胞様細胞のALP活性にも変化が認められ,金属粉末が骨芽細胞様細胞の分化にも影響を及ぼすことが考えられた.
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