歯科鋳造用コバルトクロム合金のパルスレーザ溶接部に発生する割れやポロシティなどの欠陥の原因を解明することを目的として研究を行った。 第一の研究として、パルス波形がポロシティーの発生に及ぼす影響について検討した。 研究材料には、市販鋳造用コバルトクロム合金(REMANIUM GM800、DENTAURUM社)の鋳造体を用いた。2枚の試料を重ね合わせた接合部にシングルパルスYAGレーザ照射を行って、スポット溶接部を形成した。レーザの集光には焦点距離120mmのレンズを用い、アルゴンガス雰囲気でレーザ照射した。照射条件としてパルス波形、出力、パルス幅および焦点はずし距離を変化させた。そして、溶接した試料を強制的に破断させ、破面に認められるポロシティーを観察した。その結果、矩形波のパルスYAGレーザの溶接においては、ポロシティーのない深い溶込みを得ることは非常に困難であること、波形制御によって、ポロシティーの形態や位置が変化することが判明した。 第二の研究として、溶接部の凝固割れの発生に大きく関与する溶融動態について観察した。 研究材料には、市販鋳造用コバルトクロム合金のBiosil l(DegussaAG社)、コバルタン(松風社)およびコバルタンをリン酸塩系埋没材(スノーホワイト、松風社)で鋳造した鋳造体を用いた。これらの合金を光学顕微鏡で観察しながら顕微鏡用加熱装置(LK-1500、Linkam Scientiffic Instruments社)で加熱した。その結果、割れ発生が少ない合金であるコバルタンは粒界とマトリックスの溶融温度の差が小さいが、Biosil lおよび鋳造体ではこの差が大きいことが判明した。
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