5-アミノレブリン酸(ALA)の全身および局所投与における口腔癌への集積状況および同部でのプロトポルフィリン産生を、ハムスターの実験的誘発癌において検討した。ハムスターの頬嚢にジメチルベンズアントラセン(DMBA)を週3回塗布し、10週から20週の期間処理し作製された粘膜癌を使用した。ALA投与により、腫瘍や上皮組織にプロトポルフィリンが産生され局所に蓄積するので、紫外線蛍光撮影装置によりポルフィリン蛍光を評価した。まず、ALAを250mg/Kgの濃度で腹腔内に投与し、経時的に紫外線撮影したところ、腫瘍および周囲粘膜にポルフィリンの蓄積による紫外線励起蛍光が増強するのが確認された。次に、ALAを局所投与する目的で、粘膜に接着する軟膏にALAを30%および3%の濃度で溶解したものを腫瘍に塗布し、ポルフィリンの産生状況を比較した。その結果、3%濃度のALA軟膏の方が、30%の軟膏よりポルフィリンによる蛍光が強く認められた。しかし、蛍光を発する部位が腫瘍表面に散見される程度で蛍光強度も低い状態であった。そこで、より深部へALAを浸透させる目的で、ジメチルスルフォキシド(DMSO)を3%と30%ALA軟膏に溶解し、腫瘍に塗布した。DMSOの溶解によりポルフィリンの蛍光が軽度増強し、腫瘍の割面の評価では、表層から数mmの深部まで蛍光が観察され、DMSOの効果が認められた。これらの結果から、DMSOを溶解したALA軟膏の局所投与により腫瘍にポルフィリンの蓄積が生じ、紫外線撮影によりその状態が評価可能であることが示唆された。これらの結果をもとに、ヒト口腔癌樹立細胞株の培養を開始しており、ヌードマウスに腫瘍を作製し、ALA軟膏塗布後に光照射による抗腫瘍効果を検討する予定である。
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