ハムスター頬嚢に作製した実験的誘発癌および口腔扁平上皮癌の樹立細胞株にて作製したヌードマウス皮下腫瘍に対して、5-アミノレブリン酸(ALA)を投与して紫外線蛍光撮影により観察した。ポルフィリンの産生によると思われる赤色蛍光は、粘膜、皮膚および腫瘍に認められ、特に腫瘍には周囲より強い赤色蛍光が観察された。そこで、赤色蛍光を発する腫瘍を摘出し、生化学的に蛍光物質を分析した結果、腫瘍内には405nmの励起波長により630nにピークを有する蛍光波長を認め、プロトポルフィリンが産生、蓄積されていることが確認された。また、赤色蛍光は強度が経時的に変化し、腫瘍内のプロトポルフィリン濃度との相関が示唆され、ALA投与後の評価に紫外線蛍光撮影の有用性が示された。 次に、ヌードマウス腫瘍を用いて、ALAによる光化学療法の抗腫瘍効果を検討した。ヌードマウスにALAを500mg/kgの濃度で腹腔内投与し、4時間後に紫外線蛍光撮影によりポルフィリンの集積を確認し、光を照射した。最初に直線偏光型赤外線照射器を用いて600〜1800nmの光を腫瘍に照射したが、照射条件を種々変更しても、腫瘍を被覆している皮膚の熱傷を認めたのみで、期待された抗腫瘍効果はほとんど認められなかった。そこで、赤外線照射器を用いて380〜3000nmの光線に変更し、抗腫瘍効果を組織学的に検討した。本赤外線では熱も発生するので、光化学療法と温熱療法との併用効果も期待して実験を施行した。また、ALAによる光化学療法において一般的に使用されている630nmの光線も使用、赤外線照射による治療との抗腫瘍効果の比較を組織学的に検討している。しかし、抗腫瘍効果が表層のみしか確認されていないのが現状で、今後さらに、腫瘍深部まで抗腫瘍効果が得られる至適光線の条件や照射時間などを検討する予定である。
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