研究概要 |
われわれは,平成10年度より各種口腔粘膜疾患,主として口腔扁平苔癬患者にビスコクラウリン型アルカロイド(BA,セファランチン【○!R】)長期間投与し,末梢血好中球のO_2^-産生能ならびにそれに関与する血漿中各種サイトカイン,特に好中球造血において最も重要な因子であると考えられるG-CSF, IL-1α, IL-1β, IL-6, TNF-αの臨床経過にともなう変動を検討してきた。本年度も継続し,末梢血好中球のO_2^-産生能ならびにそれに関与する血漿中各種サイトカイン等のBAの効果に関与する因子について検討をおこない以下の知見を得た。 1,口腔扁平苔癬患者に対するBAの投与は臨床的に有用であり,BA投与前と投与中や投与後の臨床症状改善度には統計学的有意差が認められた。 2,腔扁平苔癬患者のBA投与による臨床症状改善時には,BA投与前に比べて投与中や投与後に末梢血好中球のO_2^-産生能の有意な抑制が認められた。 3,口腔扁平苔癬患者のBA投与による臨床症状改善時には,血漿中TNF-α,IL-1βの低下傾向(それぞれP=0.12,P=0.09)が観察されるようであった。 これらの知見により,口腔扁平苔癬の発症過程において末梢血好中球のO_2^-過剰産生とTNF-α,IL-1βなどのある種の血漿中サイトカインの関与の可能性が示唆された。 今後,口腔扁平苔癬に関して検討を続けるとともに,他の口腔粘膜難治性疾患(放射線性口内炎,慢性再発性アフタ,シェーグレン症候群等)に関してもBA投与による効果を検討する予定である。
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