研究概要 |
われわれは平成10年から口腔扁平苔癬患者にビスコクラウリン型アルカロイド(BA,セファランチン^<【○!R】>)を投与することにより,末梢血好中球のO_2^-産生能,各種サイトカインレベルの臨床経過に伴う変動を検討し,また生検材料における各種サイトカインの免疫染色を行い臨床経過との関連を検討してきた.BA投与による臨床症状改善時には,末梢血好中球のO_2^-産生能の有意な抑制が認められ,口腔扁平苔癬の発症過程において末梢血好中球のO_2^-過剰産生が関与する可能性が示唆された. 一方,生体は組織や細胞内外に酵素系,非酵素系のO_2^-除去機構を備え,酵素毒性から生体を防御している.抗酸化酵素としてはスーパーオキシドジシムターゼ(CuZn-SOD,Mn-SOD),グルタチオンペルオキシターゼ(GPX),カタラーゼなどの酵素が代表的である. 本年度は口腔扁平苔癬における活性酸素の関与についてさらに検討すべく,当科にて加療を行った30症例の生検材料において抗酸化酵素Mn-SOD,GPXの免疫染色を行いBA投与による臨床経過との関連を検討した. 1.Mn-SOD,GPXの免疫染色ではそれぞれ16/30症例(53.3%),17/30症例(56.7%)が陽性であった. 2.BA投与が有効であった症例ではSOD発現の見られない場合が多く,BA投与の有効性に影響を及ぼす因子としてSOD発現が有意な因子であった(ロジスティック回帰分析). 以上より,口腔扁平苔癬の発症過程,BAの作用機序において抗酸化酵素,活性酸素の関与の可能性が示唆された.
|