研究概要 |
既製の網目状のポリ乳酸シートを重ね合わせ,溶媒を用いて溶解接着させ,気孔を有するシートを作製した.またアパタイト粉末を溶媒に混合することによりポリ乳酸シートにアパタイト粉末を固定できることがわかった. この2種類のGBR膜を用いて動物実験を行った.実験動物として15週令ウィスター系雄性ラットを用いた.ラットの脛骨にフィッシャーバーを用いて貫通するように骨欠損を作製した.同部を作製した2種類のGBR膜で被覆した.経時的に灌流固定を行い,脛骨を周囲組織と一塊に摘出し,ギ酸にて脱灰しパラフィン包埋後厚さ4μmの切片を作製しH-E染色を行い光学顕微鏡で観察した.コントロールはGBRを行わないものとした.コントロール群では骨欠損部は骨による閉鎖が起こらず,軟組織が陥入していた.ポリ乳酸シートの場合,軟組織の陥入はみられず,良好に骨が再生されていた.膜の強度も十分であり,また周囲に炎症性細胞浸潤は見られなかった.しかしながら観察期間中にポリ乳酸は吸収されず残存していた.アパタイトを固定したポリ乳酸シートの場合,同様に良好に骨が再生されていたが,アパタイトを固定しないものと比較して有意な差はみられなかった. 以上の結果よりポリ乳酸シートを重ね合わせて作製した気孔を有する吸収性膜はGBRに基づく骨組織再生法に有用な材料であることが確認された.
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