研究概要 |
我々は,HIF-1α蛋白の酸素分圧応答性蛋白質分解領域(oxgen-dependent degradation domain ; ODDD)を同定し,その機能的構造について詳細に検討してきた。これらの結果をもとにして,ヒト検体においてHIF-1α遺伝子に機能的変化を伴う多型が存在するか,口腔癌患者検体を用いてODDDをコードするHIF-1α遺伝子exon12領域における遺伝子多型をスクリーニングした。 広島大学医学部ヒトゲノム研究倫理審査委員会において承認された,口腔癌患者55名より採取,保存されている末梢血単核球由来genomic DNAを鋳型とし,特異的PrimerによりHIF-1α遺伝子exon12領域を増幅した。遺伝子多型のスクリーニングは,最近開発されたdenaturing high performance liquid chromatography(DHPLC)法を用いて行った。その結果,14名(25.5%)に遺伝子多型の存在が示唆された。DHPLC法の有用性も合わせて検討するため,全ての検体についてDirect-Sequenceを行い,塩基配列の確認をした。その結果,DHPLC法で遺伝子多型が示唆された検体全てにおいて,アミノ酸置換を伴う多型を新たに見いだした。それらは,582番目のProlineがSerineへ置換するtype I(18.2%)と588番目のAlanineがThreonineに置換するtypeII(7.3%)に大別された。臨床病理学的解析の結果,HIF-1α機能制御に遺伝子多型等の遺伝子側要因が関わり,それによる機能亢進が腫瘍増殖に関わっている可能性が示唆された(現在投稿中)。現在,in vitro実験系を用いたHIF-1α変異体の機能解析が進行中である。
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