分子量16kDaのレプチンは主に白色脂肪細胞より産生・分泌され、視床下部にあるレプチン受容体を介して摂食抑制、体脂肪減少などの抗肥満作用を有しているホルモンと考えられてきた。近年、レプチンが胎盤、子宮、骨格筋など脂肪組織以外からも産生・分泌され、胎児の成長や生殖機能に影響を与えるなど、肥満抑制作用以外にも多彩な作用を示すことが報告されている。また、レプチンが骨形成に対しても何らかの生理的作用を有している可能性を示唆する報告もあるが、骨組織におけるレプチンの局在およびその役割については解明されていない。そこで、本研究では内軟骨性骨化過程におけるレプチンの役割を明らかにすることを目的に、細胞生物学的検討を行った。 本年度の研究結果から明らかになったことは以下のとおりである。 1.生後1週齢、雄性ICRマウスの大腿骨の二次骨化中心および成長板の新生血管に近接する肥大軟骨細胞および骨芽細胞に強くレプチンが発現していた。また、マウス軟骨細胞株(MCC-5)およびマウス骨芽細胞株(MC3T3-E1)がレプチンを産生・分泌することを確認した。 2.ヒト血管内皮細胞(Huvec)には機能的レプチン受容体が存在していた。また、Huvecの増殖能は0.1〜100ng/ml、遊走能は0.1〜100ng/ml、管腔形成能は100ng/ml、およびMMP-2活性は0.1〜100ng/mlのレプチンにより有意に促進されることが明らかとなった。 3.db/dbマウス(レプチン受容体欠損型マウス)の大腿骨の長さは正常型マウスに比較していずれの週齢においても約13%短く、また二次骨化中心への血管侵入も約2日遅延した。 これらのことより、内軟骨性骨化過程において、レプチンが血管新生を活性化することにより、骨格成長を促進している可能性が示唆された。
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