分子量16kDaのレプチンは主に白色脂肪細胞より産生・分泌され、視床下部にあるレプチン受容体を介して摂食抑制、体脂肪減少などの抗肥満作用を有しているホルモンと考えられてきた。近年、レプチンが胎盤、子宮、骨格筋など脂肪組織以外からも産生・分泌され、胎児の成長や生殖機能に影響を与えるなど、肥満抑制作用以外にも多彩な作用を示すことが報告されている。また、レプチンが骨形成に対しても何らかの生理的作用を有している可能性を示唆する報告もあるが、骨組織におけるレプチンの局在およびその役割については解明されていない。そこで、本研究では内軟骨性骨化過程におけるレプチンの役割を明らかにすることを目的に、細胞生物学的検討を行った。 昨年度(平成13年度)の実験結果より、レプチンが血管新生を促進することにより骨格成長期における内軟骨性骨化を促進することが示唆されていた。本年度は、さらに臨床的応用を目指すために、口腔外科学領域で頻繁に遭遇する疾患のひとつである骨折の治癒過程(内軟骨性骨化)におけるレプチンの役割について検討を行った。 得られた結果は以下の通りである。 1.生後5週齢ICR雄性マウスの右側第8肋骨を骨折させ、その治癒過程におけるレプチンの発現をRT-PCRおよび免疫組織化学的手法で検索した。骨折治癒に伴い、レプチンの発現は徐々に上昇し、骨折治癒部に形成された軟骨へ血管侵入が認められる時期(骨折後14日目)に最高値を示した。その後、骨折の治癒に伴い、骨折前の発現レベルまで低下した。 2.レプチン欠損マウス(ob/obマウス)およびレプチン受容体欠損マウス(db/dbマウス)の骨折治癒過程を正常型マウスと比較検討したところ、骨折治癒部に形成された軟骨から骨への置換時期が遅延されていた。 これらのことより、骨折治癒過程における内軟骨性骨化においても、レプチンが分泌され、骨折の治癒に対して促進的に作用している可能性が示唆された。
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