研究概要 |
1.7種類のヒト頭頸部癌細胞株と7種類の正常ヒト口腔粘膜上皮細胞及び唾液腺細胞における転写因子NFкB活性を検索したところ、頭頸部癌細胞株においては正常口腔粘膜上皮細胞及び唾液腺細胞に比較して著しい活性の増強が認められた。そしてこの活性の増強は、IкB kinase活性の上昇に起因していることを明らかにした(Cancer Lett,171:165-172,2001)。 2.口腔癌細胞株(B88)に変異型IкBα cDNAを遺伝子導入した細胞クローンを樹立した(B88cl-1,B88cl-2,B88cl-3)。これらの細胞クローンにおいては、ヌードマウス背部皮下での造腫瘍性の低下が認められ、これは、NFкBによって発現調節をうけている血管新生因子(IL-8,VEGF)の産生低下によることを明らかにした(投稿中)。 3.抗癌剤である5-Fluorouracil(5-FU)のヒト唾液腺癌細胞に対する抗癌分子機構には、5-FUによるNFкB活性の低下を介した抗アポトーシス蛋白の発現抑制が関与していることを明らかにした(Biochem Biophys Res Commun,282:292-296,2001)。 4.アルカロイド製剤であるセファランチンはヒト唾液腺細胞において、TNF-αによって誘導されるNFкB活性を抑制することにより、MMP-9産生を低下させることを明らかにした(Arthritis Rheum, in press)。 5.ヒト唾液腺細胞において、TNF-αによって誘導されるアポトーシスからの回避機構として、TNF-αによる抗アポトーシス蛋白であるTRAF-1の誘導が重要であることを明らかにした(Exp Cell Res, submitted for publication)。
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