研究概要 |
同所性移植法にて浸潤・転移能に相違のある舌癌細胞株と歯肉癌細胞株のマイクロアレイ解析を行った。舌癌細胞株においては転移性癌細胞株群と非転移性癌細胞株群ではそれぞれの群で遺伝子の発現パターンが類似していたが,舌癌細胞株と歯肉癌細胞株では発現パターンが違っていた。非転移性癌細胞株にて発現し転移性癌細胞株にて発現していない遺伝子(転移抑制候補遺伝子)のほうが,転移性癌細胞株で発現し非転移性癌細胞株にて発現していない遺伝子(転移関連候補遺伝子)よりはるかに多かった。また患者の検体でも原発の部位(舌,歯肉等)により発現パターンが違うことや個人により遺伝子の発現に相違があること,採取時の条件にてRNAの破壊を認めるものがあり,マイクロアレイ解析ができない症例もあったので,共通性を検出するためにはかなりの症例数が必要であった。患者の検体からの転移抑制候補遺伝子の検出は,上記癌細胞株間の解析と比較し容易ではなかった。これは原発巣での採取部位の問題と転移巣ではこれらの遺伝子は検出できないことによると考えられた。また解析結果から得られた遺伝子(デスモコリン3,HOXD3等の遺伝子)の機能的解析のためにトランスフェクタントを作製し,癌細胞株の形質の変化を検討している。なお我々のマイクロアレイ解析システムは昨年より配列のわかった15000種類のアレイシステムにきりかえていたが,オリゴの質的問題のため作製が遅延したので,当初施行していたヒト肝臓由来のアレイ(15000個)とヒト白血球由来のアレイ(15000個)を使用し,得られた有用な遺伝子はシークエンスにて同定した。
|