研究概要 |
ラット三叉神経節を経眼窩的に圧迫障害し,三叉神経ニューロパチーを作成した(TNP群).また,同様の手技で三叉神経節を圧迫しないSham手術を行った群(SHM群)と,大槽内にNGFおよびBDNFを投与したNGF群,BDNF群を作成し,放射熱に対する逃避潜時と機械刺激に対する逃避閾値を観察した. TNP群とNGF群では,術後7日目より放射熱ならびに機械刺激に対し,過敏に反応を示すようになり,逃避までの潜時の短縮と閾値の低下が観察された.これに対し,Sham群とBDNF群では,放射熱に対する潜時の短縮,機械刺激に対する閾値の低下は見られず,hyperalgesia, allodyniaの出現は見られなかった.さらに,この際の三叉神経脊髄路核尾側亜核におけるc-fosの発現を観察すると,TNP群では,c-fosの発現が明らかであったが,sham群とBDNF群では対照部位との際が明らかでなかった. このことから,少なくともNGFはそれ自身の作用を介して,中枢神経の感作に関与している可能性があり,神経障害後の中枢神経系の刺激伝導の変容に大きなはたらきを有していると考えられる.一方,BDNFはそれ自身が直接的に中枢神経の感作を導く作用は有していないと考えられる. しかし,三叉神経節の障害後にBDNFを投与すると,過敏反応が若干増強されるデータを示し,BDNFは健康な神経線維と障害を受けた神経線維では異なる作用を有している可能性がある.神経障害後におけるNGFとBDNFのはたらきについては,現在検討中である.
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