研究概要 |
前年度の研究でラット大槽内にNGFを持続注入すると,放射熱に対すると逃避潜時と機械刺激に対する逃避閾値が減少することが観察された.本年度はNGF注入3日前から還元型グルタチオン(GSH)200mg/kg/日または2000mg/kg/日を腹腔内投与したNGF-200群とNGF-2000群,ならびにGSHの代わりにDEMを4mg/kg/日投与したNGF-DEM群における放射熱に対する逃避潜時と機械刺激に対する逃避閾値を観察した.また,これと対比すべくNGF注入を行わないでGSH2000mg/kg/日,DEM4mg/kg/日を投与したSHM-2000群およびSHM-DEM群を作成し,同様の観察を行った. NGF-200群とNGF-DEM群では,術後4日目および7日目より放射熱に対し,過敏に反応を示すようになり,逃避までの潜時の短縮が観察された.これに対し,NGF-2000群とSHM-2000群,SHM-DEM群では,放射熱に対する潜時の短縮,機械刺激に対する閾値の低下は見られず,hyperalgesiaの出現は見られなかった.一方,三叉神経脊髄路核尾側亜核におけるc-fosの発現は,SHM-2000群,SHM-DEM群に比べるとNGF-DEM群,NGF-200群で強く認められるようであったが,NGF-2000群ではこのc-fos発現が抑えられているようであった. これらの結果は,GSHがNGFによる三叉神経核細胞の感作を抑えることによってhyperalgesiaの出現を抑制する可能性を示している.
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