EGF刺激によるヒト口腔癌細胞の運動シグナル伝達の解析

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13672115
• 研究機関: 岐阜大学
• 研究代表者: 柴田 敏之 岐阜大学, 医学部, 教授 (50226172)
• 研究分担者: 加藤 幸弘 岐阜大学, 医学部, 助手 (30293567) ; 土井田 誠 岐阜大学, 医学部, 助教授 (90313890) ; 永易 裕樹 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (90265075) ; 山下 知巳 岐阜大学, 医学部附属病院, 助手 (80345793)
• キーワード: SCC / INVASION / METASTASIS / HUMAN

研究概要

上記の研究により、現在、以下の点までが明らかとなった。
1:EGF刺激によりヒト口腔癌の運動能、細胞間通過能、細胞外マトリックス分解酵素産生の増強が生じ、EGFはヒト口腔がんの悪性化進展因子となり得ることが示された。
2:EGF高感受性クローン、EGF低感受性クローン、オートクリン・ループ獲得クローンがヒト口腔癌細胞に混在することを明らかとし、各クローンを樹立した。即ち、口腔がんにおいて細胞レベルではEGF刺激に対し様々な態度を示すことが示された。
3:EGF刺激後の運動シグナルは、受容体リン酸化⇒PLCγ活性化⇒DG依存性PKC活性化により伝達されることを明らかとした。また、別の経路として受容体リン酸化⇒PI3K活性化⇒PKC活性化により伝達されることが明らかとなった。
4:上記の結果よりEGF刺激後の運動シグナルはerbBホモ二量体形成又はerbB, erbB3ヘテロ二量体形成により伝達が開始され、その両者のシグナルが合同する必要のあることが示された。即ち、一方のシグナルが遮断されることにより運動抑制を図ることが可能と考えられた。
5.上記の各シグナルはnPKCδ,aPKCξを活性化し、この二つのシグナルにより始めて運動が生じ、両者のクロストークにより以降のシグナルが伝達されることが示唆された。また、EGF刺激によりがん細胞内にROS(reactive oxygen spices)が発生し、シグナル伝達および悪性形質獲得に関与している可能性が示めされた。

研究成果

• [文献書誌] T.Shibata, et al.-4: "Detection of TP53 mutation in ameloblastoma by the use of a yeast functional assay"J Oral Pathol Med. 31. 534-538 (2002)
• [文献書誌] Zeki Topcu, I.Chiba, M.Fujieda, T.Shibata.et al.-7: "CYP2A6 gene deletion reduces oral cancer risk in betel quid chewers in Sri Lanka"Carcinogenesis. 23. 595-598 (2002)
• [文献書誌] T.Kobaynshi, F.Okada, N.Fuji, N.Tomita, S.Ito, H.Tazawa, T.Shibata.et al.-3: "Thymosin-β4 Regulates Motility and Metastasis of Malignant Mouse Fibrosarcoma Cells"American Journal of Pathology. 160. 869-875 (2002)
• [文献書誌] D.Nakata, J.Hamada, YiBa, K.Matsushita, T.Shibata et al.-2: "Enhancement of tumorigenic, metastatic and in vitro invasive capacity of rat mammary tumor cells by transforming growth factor-β"Cancer Letters. 175. 95-106 (2002)
• [文献書誌] Hamada, J., Nakata, D., Nakae, D., Kobayashi, Y., Akai, H., Konishi, Y., Okada, F., Shibata, T.et al.-2: "Increased oxidative DNA damage, 8-hydroxydeoxyguanosine, in rat ER-1 mammary tumor cells by continuous EGF-stimulation"J. Natl. Cancer Inst. 93. 214-219 (2002)