研究概要 |
今年度の本研究では高齢のラットを用い,鎮静剤・鎮痛剤の併用与薬による,自発運動量,心拍数,体温など生体への影響を観察した。高速液体クロマトグラフィーを用いた血中カテコラミン濃度定量,そして各種の生化学的実験を行い,本研究の発展・展開を試みた。 1.小動物用テレメータシステムで行動観察 高齢のラットを用いて行動観察を試みた。若年ラットにおいて自発運動に影響を与えない量の鎮痛剤を与薬した時には,自発運動量は低下傾向が示唆された。一方,若年ラットで自発運動に影響を与えない量の鎮静剤を与薬すると死亡する高齢ラットが続出した。与薬量を半減して検討した結果,鎮静剤・鎮痛剤併用の増強効果を証明できなかった。 2.血中カテコラミン濃度 鎮痛剤と鎮静剤の単独与薬で自発運動に影響を与えない量では,血中カテコラミン濃度の変動は認めない。しかし,持続痛を与えた状態で検討する必要性を認めた。 3.ラット脳シナプス膜画分におけるGABA_A受容体複合体のCl^-取り込みに対する影響 鎮静剤はGABA_A受容体複合体のCl^-取り込みに影響を与えないことが示唆された。 4.リン脂質二重膜に対する結合・近接程度の定量および生物学的活性を有する内因性神経物質の定量 鎮痛剤と鎮静剤のリン脂質二重膜に対する結合と近接の程度を定量測定した。その結果,明確な方向性は観察できなかった。なお,3-(4-chloromethylthiazol-2-yl)-7-diethylaminochromen-2-oneと3-(5-acetyl-4-methylthiazol-2-yl)-7-diethylaminochromen-2-oneは,イサチンのHPLS用蛍光誘導体化試薬として生体内機能や生体内動態解明に応用可能であった。 本実験系ではストレスとなる持続的な痛み刺激や不安・恐怖を与えていない。したがって,持続痛を与えるモデルや不安・恐怖を与えるモデルを組み込み検討する必要性を認めた。
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