研究概要 |
我々は、新規物質として合成したユージノール誘導体の細胞毒性とアポトーシス誘導作用を培養ヒト癌細胞(HSC-2、HSC-3、HSG、HL-60)を用いて検討した。その結果、2-methoxy-4-alkylphenol[eugenol(EUG)、2-methoxy-4-methylphenol(MMP)、その二量体(bis-EUG、bis-MMP)]は、特にHL-60細胞に対して疎水性(Log P)が増すと毒性が増大した。一方、2-t-butyl-4-methylphenol(BHA)、その二量体(bis-BHA)、2,6-t-butyl-4-methoxyphenolは、疎水性が増すと毒性が減少した。これは2-methoxy基をもつ前者と疎水性が高く、かさ高な2-t-butyl置換基をもつ後者との違いによるものと考えられた。また、DNA断片化はHL-60細胞のみに認められ、特にモノフェノールではBHA次いでEUG、ビスフェノールではbis-EUGが低濃度で断片化を誘導した。そして、Cu/ZnSOD活性に比べMnSOD活性が有意に減少したので、methoxyphenol類のDNA断片化はラジカルによる酸化ストレスによるものと推察された。そこで、methoxyphenol類のEUGによるHL-60細胞の細胞死あるいはアポトーシス誘導の過程におけるSOD分子種のmRNAの発現をRT-PCR法で測定した。細胞死が誘導される高濃度域(CC50値の2倍以上)においてのみ有意なMnSOD、Cu/ZnSOD mRNAの発現の減少が観察され、この減少はアポトーシスが起った結果の可能性が示唆された。そこで、EUGの使用をSH基含有抗酸化物質(グルタチオン、システイン誘導体、グルタチオンエチルエステル型)を用いて検討した。抗酸化物質のEUGへの添加は各種癌細胞を障害させたので、EUGはprooxidantとして作用することが分った。さらに、EUGによるHL-60細胞のcaspaseの活性化を検討し、外因性経路と内因性経路の両者が活性化され、より強いcaspase-3の活性化に到達した。しかし、caspase-3を介するアポトーシスと同時に壊死も誘導されている可能性があると推察された。
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