研究概要 |
顎骨欠損に対する治療法には骨移植などが用いられている。しかしながら,成長因子を用いた骨誘導法は確立されていない。 BMP(骨誘導蛋白)は骨芽細胞の分化や細胞外マトリックスの合成を促進しており,骨形成において中心的な役割を果たしているものと考えられている。BMPの骨誘導は先ず軟骨が形成され,次に骨組織によって置き変わる。軟骨から骨組織に置換される過程はBMPと拮抗作用を持つNogginが関係しているものと考えられる。そこで,TGF-βスーパーファミリー,collagen合成に至る蛋白の局在と遺伝子発現を比較検討した。 ラットの皮下組織にBMP 1mg含む脱灰骨を埋入し,経時的にBMP等の反応を切片標本を用いて観察した。TGF-βおよびBMPとその特異的receptorの局在も一致していた。 埋入後1日目では,脱灰骨移植片周囲にリンパ球が多数集合した炎症像がみられた。移植後3日目では移植片周囲の炎症像は消失し,多数の毛細血管および細動脈が新生された。移植後5日目では移植片周囲には軟骨組織が新生された。移植後7〜10日目では軟骨組織は骨組織に置換され,移植後14日目では骨髄に相当する組織が現れ,骨の改造も観察された。TGF-βおよびBMPとその特異的receptorの局在および遺伝子発現は一致していた。反応は埋入後1日目では,リンパ浸潤,軟骨が新生される部位では前軟骨細胞,骨形成部位では前骨芽細胞に最も強かった。骨芽細胞TGF-βの反応はBMPよりも強かった。NogginおよびCBFA-1の反応は前骨芽細胞および骨芽細胞にみられた。 骨誘導において,CBFA-1およびNogginの発現はBMP-4によって促進され骨芽細胞や軟骨細胞の分化を調節し,signalはSmad familyによって仲介されているものと考えられた。
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