インプラントと骨との強固な結合は、過度の咬合力が負荷された場合インプラント頚部の皮質骨への応力集中をもたらし、皮質骨は破壊、吸収される。さらに、インプラント周囲炎を併発すると、皮質骨の破壊、吸収は増大する。以上の仮説を証明するために、成犬の下顎骨に骨との接合強度の異なる2種類のインプラントを植立し、それぞれのインプラントに1)過度な咬合力、2)インプラント周囲炎、3)過度な咬合力+インプラント周囲炎、の3種類の条件を負荷し、インプラント周囲骨の破壊、吸収を比較した。その結果、1)骨の破壊、吸収は2種類のインプラントとも、過度な咬合力+インプラント周囲炎>インプラント周囲炎>過度な咬合力>コントロール群(正常咬合+インプラント周囲炎(-))の順に大であった。2)2種類のインプラントとも、過度な咬合力より、インプラント周囲炎を負荷したほうが、骨の破壊、吸収が著明であった。3)2種類のインプラント間にみられる骨との接合強度の違いは、骨の破壊、吸収に多大な影響を及ぼさなかった。これらの実験結果より、インプラントの経過に及ぼす影響は、インプラント周囲炎が最も大であり、さらに過度な咬合力が加わると骨の破壊、吸収は急激に進行することが判明した。以上より、インプラントのメインテナンスには、まず、インプラント周囲炎を予防することが重要であり、次いで咬合調製が重要となる。インプラントの材質の違いによる骨との接合強度の違いは、比較的、インプラントの経過に及ぼす影響が少ない様に思われた。
|