大阪歯科大学附属病院を訪れた患者、本学教員および学生の了解を得て唾液を採取し、CDC処方血液寒天培地またはミティス・サリバリウス寒天培地を用いて通性嫌気性グラム陽性球菌を分離し、カタラーゼ陰性のものをレンサ球菌として保存した。これら保存菌株と高齢者から分離し保存しているレンサ球菌併せて約160株に対する最小発育阻止濃度(MIC)を日本化学療法学会標準法の寒天平板希釈法で測定した。β-ラクタム薬のMIC_<90>はアンピシリン:1.0、ピペラシリン:1.0、セファクロール:8.0、セファゾリン:0.5、セフメノキシム:0.13、セフメタゾール:8.0、セフテラム:<0.008、ラタモキセフ:16、アズトレオナム:≦128、イミペナム:<0.008μg/ml、β-ラクタム薬以外のそれはバンコマイシン:0.5、オフロキサシン:2.0、ミノサイクリン:0.06、エリスロマイシン:<0.008、クリンダマイシン:0.03、ゲンタマイシン:4.0μg/mlであった。β-ラクタム薬耐性株が数株分離されたので、それら菌株由来DNAを鋳型にして肺炎球菌のペニシリン耐性遺伝子のプライマーであるペニシリン結合蛋白質(PBP) 1A(430bP)、PBP2B(77bp)、PBP2X(292bp)を用いてPCRを行うと、PBP2AとPBP2Xで所定の大きさのバンドが検出された。この事実は、口腔レンサ球菌のDNAに肺炎球菌のPBPと類似の遺伝子が存在することを示唆している。 次年度はこの遺伝子をさらに解析するとともに、最近、バンコマイシン耐性遺伝子が肺炎球菌から検出されるとの報告があり、腸球菌のバンコマイシン耐性遺伝子のプライマーを用いて、口腔レンサ球菌における状態も検索したいと考えている。
|