大阪歯科大学附属病院を訪れた患者の了解を得て唾液を採取し、5%ヒツジ血液添加トリプチケイスソイ寒天培地に0.5μg/mlアンピシリン(ABPC)添加培地(ABPC耐性菌数)と無添加培地(総菌数)用いて通性嫌気性グラム陽性球菌を分離し、カタラーゼ陰性のものをレンサ球菌として耐性菌の割合を求めるとともに耐性菌を保存した。総菌数に占めるABPC耐性菌の割合は0〜50%で、被験者により異なっていた。耐性菌分離頻度が高い被験者ではβ-ラクタム薬が投与されていた。分離菌に対するABPCの最小発育阻止濃度(MIC)を寒天平板希釈法で調べると、MICは0.25〜16.0μg/mlの範囲に分布し、そのピークは2.0μg/mlであった。さらに、小児と成人からレンサ球菌を分離し、保存している203株に対するABPCのMICは【less than or equal】0.03〜16.0μg/mlに分布する二峰性で、そのピークは0.06と4.0μg/ml、耐性限界値は0.5μg/mlであった。ニトロセフィンで耐性限界値を超えた菌株のβ-ラクタマーゼ産生性を調べた結果、この酵素活性は検出されなかった。 本年度は、β-ラクタム薬耐性株が保存できたのでMICの大きい菌株からDNAの抽出をファーストプレップ法とフェノール法で試みたが、DNAの抽出はかなり難しかった。そこで、細胞壁を破壊するリゾチームで処理してDNA抽出した。そのDNAを鋳型にして肺炎球菌のペニシリン耐性遺伝子のプライマーであるペニシリン結合蛋白質(PBP)1a(430bp)、PBP 2b(77bp)、PBP 2x(292bp)およびStreptococcus mitis由来のPBP遺伝子のプライマーも併せて用いてPCRを行うと、両菌種のPBP 2aとPBP 2xおよびpbp 1aで所定の大きさのバンドが検出された。この事実は、口腔レンサ球菌のDNAに肺炎球菌のPBPと類似の遺伝子が存在する可能性を示唆している。
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