研究概要 |
Eliav et al.ら(Pain 83 162-182,'99)によるNeuritisモデルを用いることにより末梢神経周辺の免疫系が知覚神経系に及ぼす影響を検討した。このモデルはラットの坐骨神経をオキシセルで覆い,そのオキシセルを介して坐骨神経表面にComplete Freund's Adjuvantを投与するもので,術後4日目をピークにhyperalgesiaやallodyniaが出現することが報告されている。 まず,坐骨神経局所におけるmacrophageの出現,およびcytokineの発現を免疫組織化学法により検討した。この結果,術後1日目より坐骨神経内にmacrophageが出現し,TNFα, IL-1β, Leukemia inhibitory factorなどの発現が観察された。それらの陽性細胞の形態よりSchwann cellでcytokineが発現していることが示唆された。しかしながら,正確な細胞種の同定は末梢神経の各構成成分に対するマーカーを用いて二重染色を行う必要がある。 さらに,このNeuritisによる後根神経節(DRG)細胞への影響を検討した。Axotomyなどの軸索切断を伴う末梢神経傷害によりDRG細胞でNeuropeptide Y (NPY), GAP-43,ATF-3などの発現が誘導されることが報告されており,これら末梢神経傷害のマーカーがNeuritisにより誘導されるか否かを免疫組織化学法により観察した。その結果,NPY, GAP-43,ATF-3いずれもDRG細胞で発現が認められた。これは末梢神経局所の免疫系の活性化が神経傷害を引き起こしうることを示唆している。しかしながら,手術操作による神経傷害の可能性も完全には否定できず,手術方法の改良も検討する必要があると考えられる。
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