研究概要 |
口腔の2大疾患のひとつである歯周病は特定の病原性菌による感染症的色彩が強い疾患であるため,類似した臨床症状を呈する場合であっても,歯周病の進行性や治療への反応性はプラーク中の細菌種の違いによって大きく異なる.従って,歯周病の細菌学的リスク因子を的確に把握するためには,患者歯周組織に棲息する病原菌種を的確に把握する「病原菌のモニタリング」が治療方針の立案・経過の予知には非常に有用である.歯周病の進行性や治療への反応性を予知するための「歯周状態の変化に伴うプラーク中の細菌成分の消長」に関する情報を収集することが本研究の目的である.まず本年度において歯周病患者および健康歯周組織を有する被験者より採取した歯肉縁下プラークを採取し,10種の歯周病原性菌の有無をPCR法により同定した.その結果,歯周病患者のプラークからは,T. denticola(p<0.001),P. gingivalis(p<0.001),B. forsythus(p<0.01),C. rectus(p<0.05)が健康対照群に比べ有意に高い頻度で検出された.逆に、E. corrodens(p<0.001),C. ochracea(p<0.05)は有意に低い頻度で検出された.P. intermedia, P. nigrescens, A. actinomycetemcomitans, C. sputigenaの4菌種の検出率は,両群ともに高頻度で検出され,分布率に有意な差は認められなかった.この結果をふまえ,歯周病患者の治療開始よりメインテナンスに至るまでの期間,歯周病原性細菌のモニタリングを行い,歯周病の発症と進行性に関与する細菌学的リスク因子を決定し,さらにEr : YAGレーザーを用いた歯周治療を行い,治療効果とポケット内細菌叢の変化について検討を加える予定である.
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