研究概要 |
I.歯肉線維芽細胞を用いたin vitroの研究 1)ヒト由来の線維芽細胞培養系に,カルシウム拮抗薬のニフェジピンを添加し,細胞の増殖と細胞死に対する影響を調べた.その結果,コンフルエントになった後の細胞死および増殖能は,培養液中のニフェジピン濃度依存性に抑制されることが示された. 2)マクロファージ様RAW264細胞において内毒素性リポ多糖(LPS)の刺激で誘導される一酸化窒素(NO)の産生および細胞死は,ニフェジピンによって抑制された.また,LPS刺激によってRAW264細胞で誘導されてくる誘導型N0合成酵素(iN0S)の産生は,ニフェジピンによって抑制された. 3)歯肉線維芽細胞とRAW264細胞の共培養系にLPSを添加すると,線維芽細胞の細胞死が誘導されるが,ニフェジピンによってこのアポトーシスが抑制された. これらのことから,歯肉線維芽細胞の増殖とアポトーシス,および炎症反応に対するニフェジピンの作用が薬物誘発性歯肉肥大の発生に深く関わっていることが示唆された. II.ラットを用いた薬物相互作用のin vivo実験 1)薬物誘発性歯肉肥大における薬物間の相互作用の影響をみるため,ラットを用いてニフェジピンのチトクロームによる薬物代謝と競合する可能性のあるケトコナゾールを併用投与した.独自に確立した歯肉肥大誘発実験系を用いて,ニフェジピンとケトコナゾールを42日間,連続経口投与し,血中ニフェジピン濃度と歯肉肥大の程度を調べた.その結果,ケトコナゾールの投与によってニフェジピンの血中濃度は上昇してお.り,同時に歯肉肥大も重症化することが示された.
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