研究概要 |
小児の咬合と重心動揺(平衡機能)の関係を見るために,日常生活で運動を積極的に取り入れている園児(3〜5歳)を対象に調査した。咬合については,デンタルプレスケール(フジフィルム社)を3秒間中心位で噛ませ,OCCLUZER(フジフィルム社)で咬合接触面積,平均咬合圧,咬合力を分析した。重心動揺については,自動姿勢解析装置VTS-311(Patella社)を用いて,Romberg位にて,開眼,閉眼時の動揺距離,同面積を各10秒間測定した。また,加齢による運動能力の発達と平衡機能の咬合の関係をみるために,運動能力テストを行い,25m走,立ち幅飛び,ボール投げの成績と重心動揺を比較した。さらに土踏まず形成も計測した。 結果:3歳,4歳,5歳児の咬合接触面積は6.3±2.1,9.0±4.1,10.3±5.5mm^2,咬合力は各々242±127,345±146,374±180N,重心動揺面積開眼時,15.1,11.2,9.1cm^2,同閉眼時17.1,14.0,12.3cm^2,25m走は,8.9±1.3,6.9±0.6,6.1±0.5秒,ボール投げは,4.1±1.9,5.5±2.0,6.1±0.5m,立ち幅飛びは57.5±18.6,84.0±17.2,98.5±16.6cm,土踏まず形成率は33.3,37.2,73.7%であった。乳歯列期の成長発達期にある小児の咬合状態に関して,咬合力や咬合接触面積が増齢的に増加した。また,運動能力も成長するにつれて増大した。一方土踏まずは運動しないと形成が遅くなるといわれているが,今回調査した幼児は園においては,裸足保育やじゃれ付き遊び,築山での遊びなどの運動を日常生活に取り入れていて,5歳になると急速に土踏まず形成率が上がった。乳歯列期で成長期にある幼児に関して,年齢間で運動能力や咬合力の大小を比較すると有意差があった。同じ年齢内での土踏まずの有無や咬合力・咬合接触面積の大小群で運動能力を比較しても,有意差はなかった。積極的に運動を取り入れていない幼児と比較すると,差がでるであろうが,今回調査した対象は,日頃から運動に親しんでいるため,加齢の影響の方が優位であった。
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