研究概要 |
歯周疾患の発症・進展を研究する上で,歯同病原性細菌を特異的に生体から検出することは非常に重要である。本研究の目的は、原核細胞に固有の16S rRNA配列を用いて,歯周病原性細菌に対する特異的かつより精度の高い検出法の確立を目指すことである。平成13年度に口腔細菌14菌種を含む68菌種に対する16S rRNAの遺伝子情報を収集し,Porphylomonas gingivalis, Actinobacillus actinomycetemcomitansに特異的なオリゴヌクレオチドプローブを作製した。 平成14年は,この特異的なプローブを用いたFluorescent in situ hybridization法による標的細菌の検出を行い,作製したプローブの特異性の検討を行った。 遺伝子解析により抽出されたP. gingivalis ATCC33277とA. actinomycetemcomitansY4に特異的な配列に基づきジゴキシゲニン(DIG)標識のオリゴヌクレオチド(50mer)を合成した。対象菌株は,P. gingivalis 2株,Prevotella 4株,A. actinomycetemcomitans 3株,Fusobacterium nucleatum 1株の計10株の標準菌を用いた。これらの菌株をスライドグラス上に固定し,エタノール系列に浸漬し風乾した。この標本にDIG標識オリゴヌクレオチドプローブを作用させ,ハイブリダイゼーションを行った。さらにFITC標識抗DIG抗体と反応後,洗浄,風乾した。蛍光色素封入剤で封入後,落射型蛍光顕微鏡(オリンパス)を使用して観察を行った。 その結果,P. gingivalis ATCC33277とA. actinomycetemcomitansY4のDNAプローブはいずれも標的細菌の菌体1細胞の検出が可能であった。P. gingivalisプローブは近縁関係のPrevotella菌種との交差反応もほとんど認められず,特異性の高い高感度な検出が可能であることが示唆された。さらに,F. nucleatumとの混合液からの標的細菌の検出像では,標的細菌のみが検出されており,細菌叢からの標的細菌の検出でも特異的な検出が可能であることが示唆された。
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