研究概要 |
外科矯正患者76名(患者群)と,顔面骨格に不正のない一般学生110名(一般群)を対象に,顔貌の自己評価の特性を調べ,顎顔面形態,顔貌に関する心理社会的問題,およびMINIによる心理特性との関連を調べた. 1.患者の顔貌評価の特性 1)患者群の顔貌への不満は平均7.2点で,一般群(3.8点)より有意に高く,患者では下顔面と顔の外形,一般群では鼻,目などの細部と外形への不満が高かった.2)二要因分散分析から,下顎と顔の大きさには群別のみが影響したが,顔全体と目,下唇,頤,顎角,長さ,外形では性別も影響した.鼻,頬,上唇,横幅では性別のみが影響した.3)重回帰分析から,顔全体の不満度は一般群では目,顔の輪郭,鼻の3部分,患者群では顔の長さ,頤,鼻,下唇の4部分で説明された.4)以上より,患者群では一般群より顔貌への不満度が高く,特に下顎の前突と過成長,外形の変形にこだわり,一般群では細部と輪郭,女性では多くの部分を気にすることが示された. 2.患者の持つ心理社会的問題 1)因子分析から,患者では「ハンディキャップ」を強く意識し,女性患者ではさらに「心理的とらわれ」を強く意識することが示された.2)患者群では一般群よりMINIのPd, D.Pt尺度のT得点が有意に高かった.3)以上より一顔貌の受容度は対人関係の様相と問題認知の仕方と関連することが示された. 3.患者における顔貌評価と顎顔面形態及び心理特性との関連 1)患者の下顎前突の程度は標準値の2SD以上大きいが,顔貌の不満との相関はなかった.女性で男性より,年齢が高いほど不満が強かった.2)MIMIのD, Pd尺度が顔貌の不満と相関があった.3)対象の83%では心理的問題がないが,17%ではF, D, Pd, Si,Sc, Pa, Maの項目でT得点が高く,対人関係に敏感,パラノイド傾向などの問題点が示され,顔貌の不満も強く,治療中に心理特性を考慮した対応が必要と考えられた.
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