研究概要 |
本研究では,不良姿勢が頸部の動きや筋疲労,および下顎位に及ぼす影響を調べることを目的とし,本年度はまず,頭頚部の筋障害のない成人女性5名を対象に実験的解析を行った. 1.頭位変化時の下顎位と頸部の筋活動の分析 方法:実験的に自然頭位および頭位を左右旋回,または前方偏位させ,下顎位の変化と筋活動を解析した. 結果:1)旋回頭位では下顎は旋回側と逆に変位し,旋回側の下顎頭は後方,非旋回側の下顎頭は前・内方に偏位した.2)前方頭位では下顎頭は後方,および上方へ偏位した.3)下顎頭位は,旋回頭位では限界運動の外側に偏位し,前方頭位では後方・外側に偏位した.4)以上より,頭位を変化させると下顎頭が偏位し,特に前方頭位では下顎頭が非生理的な位置に移動することが示された.5)頭位変化時における頚部筋群および咀嚼筋の筋活動パターンについては,現在分析を進めている. 2.最大開閉口および咀嚼時の頭部の動きと頸部の筋活動の分析 方法:最大開閉口時およびグミゼリーを口に入れ咀嚼を開始してから終了するまでの頭部の動きとこれらの筋の活動を記録した. 結果:1)半開口と最大開口では,咬頭嵌合に比べて眼耳オトガイ角,頭蓋回転角,頚部傾斜角,頚部頭蓋角が増大し,オトガイの後下方回転,頭蓋の上方回転,頚部の前傾が生じた.2)ガム咀嚼では,下顎の下方回転と頭蓋の上方回転がみられたが,頭蓋の変化量は下顎に比べて少なかった.3)以上より,開口度が小さいと下顎と頭蓋の回転だけが起こるが,開口度が大きくなると頚部の前傾も起きて頭蓋と頚椎のバランスが保たれ開口を容易にしていると考えられた.4)両群の左側僧帽筋,胸鎖乳突筋,胸骨舌骨筋,顎二腹筋前腹および咬筋の筋活動パターンと活動量については,現在解析を進めている.
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