研究概要 |
矯正学的歯の移動時には,歯槽骨の吸収やリモデリング(再構築)などのさまざまな生体反応が惹起される.我々は歯周靭帯にこれらの生体反応を引き起こす物質があると考え実験を行っている. 本年度は,矯正力を加えた後,臼歯を取り出し,切片を作製して組織染色を行った.矯正力を加えることにより,歯周靭帯の圧迫側の細胞密度が明らかに上昇した.また,免疫染色により種々のインテグリンサブユニットと細胞成長因子およびその受容体の検出を行った結果,インテグリンαV,β3および上皮細胞成長因子受容体(EGFR)の陽性反応が認められた.これらの細胞膜タンパク質は圧迫側の血管壁に陽性であり,牽引側では陰性であった.したがって,インテグリンαV,β3およびEGFRが矯正学的歯の移動に際し何らかの重要な役割を果たしている可能性が示唆された.今後は矯正力に応答するこれらの変化がおこるメカニズムおよび役割について検討を行う予定である.
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