1)下顎正中部で離断し側方へ延長を行った症例と両側骨体部で離断し前後方向へ延長を行った症例について、顎関節部の形態的変化と位置的変化および延長部の化骨過程を密度変化として解析した。その結果、正中部での延長では両側下顎頭は外側に回転し、骨体部の延長では、後方へ時計回りに回転しているのが認められた。また、延長部の密度変化は、術前の値に復帰するまでに2-3ヶ月を要することが判明した。2)過去に下顎骨延長術(両側骨体部)を施行された2症例において、下顎頭の形態的変化を経年的に追跡した。術前および術後1年経過時ののセファログラムおよびCT画像を比較した結果、延長部の後戻り様変化と下顎頭部の平坦化などが認められた。とくに、術前より関節症状を有していた症例では、その変化は著明であった。3)三次元有限要素モデルを作製し、骨体部で延長した場合の顎関節部における力学的反力の変化をシミュレートするプログラムを開発した。主に、咬合状態の変化と筋牽引方向の変化によって力学的な反力が変化していることが判明したが、仮骨中の骨組織の力学特性などが未知のため、今後、物理実験等が必要と思われた。
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