本研究は、う蝕予防剤の開発にかんがみ、殺菌消毒作用を有する新しい弱酸性電解酸化水(EOW:松下電工社製)に着目し、このEOWがう蝕予防の洗口剤として有用であるか否かを、(1)in vitro実験、(2)動物う蝕実験、(3)臨床試験を通して検討したものである。 1.EOMは弱酸性(pH:5.1前後)であるため、in vitro実験においてEOWに牛歯エナメル質を浸漬したときのエナメル質の溶解および脱灰の度合を調べた。その結果、EOWは溶解作用、脱灰作用のいずれも弱く、1分以内の浸漬時間(洗口に要する時間)では脱灰を起こさないことが明らかとなった。 2.動物う蝕実験では、S.sobrinus接種ラットを用いて、これにう蝕誘発性飼料および飲料水としてEOWを与えて54日間飼育したときの歯面付着S.sobrinus菌数、プラーク付着量、う蝕罹患度等について調べた。その結果、EOM群のラットではS.sobrinusの歯面付着が少なくなり、プラーク形成が抑制されてう蝕の発生が約50%抑制されることが明らかとなった。 3.臨床試験では、EOWを洗口液としてヒトに4日間(15回)適用したときの唾液中細菌量およびプラーク付着率を調べた。その結果、EOW洗口群では口腔内の総細菌量・mutans streptococci量、プラーク付着率のいずれにおいてもわずかな減少にとどまった。 4.以上の成績から、EOWは、洗口液として使用しても脱灰の心配がないこと、またラットのう蝕を明らかに抑制する効果をもつことが示されたが、ヒトのプラークに対する有効性が判然としなかったので、う蝕予防の洗口剤となり得る可能性は低いと考えられた。
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