研究概要 |
リンゴ由来ポリフェノール成分中のプロシアニジンを実験材料とし、1)歯垢形成酵素(GTF)活性の阻害機構推定に関する実験、2)ハムスター実験う蝕誘発系におけるう蝕予防効果の検討を行った。 1)に関しては、まずS. mutans菌体およびS. sobrinus培養液からのGTFの効率的な精製法を確立した。具体的には、菌体破砕液もしくは培養液の水性二層分配濃縮画分を試料とし、向流クロマトグラフィーとヒドロキアパタイトクロマトグラフィーの2工程で高純度GTFを高回収率で得ることができた。また精製GTFの酵素活性に対する阻害試験において、最強のGTF阻害ポリフェノール化合物は重合度の大きなプロシアニジンであり、その50%阻害濃度は0.6μg/mLであった。さらに精製GTFとプロシアニジン間の相互作用についてIAsys光学バイオセンサーによる解析を行い、その解離平衡定数(K_D)は約10nMと見積もられた。 2)に関しては3適齢のゴールデンハムスター(計51匹)に対しS. mutants(MT8148)接種を行い,高スクロース含有飼料Diet2000(56%sucrose)による12週間の継続飼育を行った。第6週に体重の測定を行い、未処理対照群、および実験群としてプロシアニジン0.25%群,フッ化ナトリウム500ppm群の計3群に均等になるように分けた。実験群では週3回/6週間の試料溶液の歯面洗浄を実施した。12週終了後、動物を屠殺し標本とした後各群の歯垢スコア・う蝕スコアの算出を行い、プロシアニジン群,フッ化ナトリウム群のう蝕予防効果の比較検討を行った。その結果、対照群と比較して、歯垢の蓄積およびう蝕の発現はフッ化ナトリウム群にのみ有意の差を薄めた(p<0.05)。プロシアニジン群では対照群との有意の差はなかった今回の実験ではこれまでの実験結果と異なり、3群全てに重度う蝕の発生が少なかったので、この影響が大であったと考えられる。
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