研究概要 |
著者らはpHメーターを用いた、ヒト全唾液のリン酸カルシウム沈殿物形成抑制能の測定法(pH低落法)を開発し理論付けを行ってきたが、今回はこれを簡便に行うために、pH指示薬ブロムチモールブルー(BTB)を使用することとし、pH低落法との比較を行った。色調変化で判定するBTB法では、pH差が大きいことが必要だが、NaF無添加でpH変化がpH7.4から6.8(ΔpH=0.6)だったのに対し、250μMのNaF添加では、pHは7.4から6.3(ΔpH=1.1)まで低下し、BTBの青色-黄緑色-黄色にわたる色調変化を観察できた。唾液濃度が2.5,5.0,7.5%(v/v)の時、250μMのNaF添加条件で、37℃、40分温浴後、色調はそれぞれ黄色、青緑色、青色となった。このことは唾液によるリン酸カルシウム沈殿物形成抑制能をBTBの色調変化により半定量的に評価できることを示唆している。そこで実際に10名の被検者の唾液を用いて本法を実施したところ、誘導時間(pH低落法:pHメーターを用いた簡便な、in vitroリン酸カルシウム沈殿物形成の測定法)と色見本を用いたpH(BTB法)との間の相関係数(r)は唾液濃度が1.25〜2.50%(v/v)の時、0.79〜0.86となった。このことは、BTB法で、個人唾液の口腔内リン酸カルシウム沈殿物形成(再石灰化と歯石形成)に対する抑制効果を簡便に評価できることを示唆している。今後、事例を重ね口腔診査所見との比較検討を行い、スクリーニング法の一つとして応用することを考えている。
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