研究概要 |
インフォームドコンセントを十分に行い,同意の得られた患者を対象として,重度インプラント歯周炎に罹患した8本のインプラントより薄切切片を調製し,バイオフィルムを組織学的に観察するとともに,Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Fusobacterium nucleatumおよびCampylobacter rectusに対する特異抗血清を用いた酵素抗体法による免疫染色を施し,バイオフィルム形成細菌種を検索した.組織学的検索の結果,バイオフィルム細菌の感染経路が、インプラントサルカスの他、アバットメントスクリュー周囲からの内部漏洩であることが明らかとなった。免疫組織化学的検索の結果,P. gingivalisを含め使用したいずれの抗体にも陽性反応はみとめられず,現状ではこれらの細菌種は,成人性歯周炎の進行には関わっているがインプラント周囲炎にはあまり関与していないことが示唆された.現在サンプル数を増やし,継続して検索中である. また,従来の報告でインプラント周囲炎との関連が示唆されているP. gingivalisのバイオフィルムを作製し,1)生物学的(ATP)活性,2)バイオフィルム形成に関与する遺伝子,ならびに3)薬剤感受性の3点について検討した.バイオフィルム内のP. gingivalisの増殖速度は浮遊状態のP. gingivalisの1/30万であること,グルコン酸クロルヘキシジンがP. gingivalisバイオフィルムに感受性があることを解明した他,緑膿菌のバイオフィルム形成に必須であるpolyphosphate kinase(ppk)遺伝子のP. gingivalisホモログの検索よりP. gingivalis ppk遺伝子をクローニングすることに成功した.P. gingivalis ppkとEscherichia coli pplとの相同性はアミノ酸レベルで35.8%とよく保存されていることが明かとなった.
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