研究概要 |
老化は歯周病のリスク因子であるといわれているが,いまだその機序は明らかでない。テロメアは染色体末端に位置し,その長さは細胞老化の指標とされている。したがって、ある種の歯周疾患はテロメア長の短縮率から説明できるかもしれない。しかし,歯周病における老化のかかわりをテロメア長およびその短縮率から調べた研究は無い。本研究では歯周病病態における老化のかかわりを評価するための最初のステップとして,早期発症型歯周炎患者の末梢血白血球のテロメア長を測定し,検討した。被験者は明海大学歯学部付属病院歯周病科に来院した早期発症型歯周炎患者4名および同年齢の健常者16名で,各被験者から末梢血を採取し,DNA Extractor WB Kit(Wako)を用いてDNAを抽出した。さらに,抽出したDNAを制限酵素(HinfI/RsaI)で消化し,0.6%アガロースゲル電気泳動で分離した後ナイロンメンブレンに転写し,(TTAGGG)_4をジゴキシゲニンでラベルしたものをプローブとして用いたサザンハイブリダイゼーションを行い,テロメア長を測定した。その結果,1.DNA10μgから9Kbpから5Kbpのテロメア長を特異的に検出できた。2Kbp以下の部位に非特異的な反応が見られた。 2.早期発症型歯周炎患者の末梢血白血球のテロメア長は,健常者と比較して有意な短縮は認められなかった。 以上の結果から,本研究で調べた早期発症型歯周炎患者の末梢血白血球に明らかなテロメア長の短縮は見られなかった。今後,被験者数を増やし,末梢血白血球のテロメア長および歯周組織構築細胞(歯肉線維芽細胞,歯根膜線維芽細胞)の継代ごとのテロメア長の短縮率を調べていく予定である。また,本結果はテロメア長の平均値を比較しているにすぎず,染色体ごとのテロメア長を調べる予定である。
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