研究概要 |
申請者は今までの研究成果より、坑CAPモノクローナル抗体がウシ歯胚において特異的にセメント質を認識することを報告してきた(Saito et al.,Bone, Vol29,242-248,2001)。さらにこの抗体はセメント芽細胞を特異的に認識し、未分化間葉系細胞集団である歯小嚢組織と染め分けることも見出した。そこで申請者はセメント芽細胞前駆体の採取を目的に、歯小嚢細胞が坑CAPモノクローナル抗体に陽性反応を示すセメント芽細胞に分化能を有するか否かを検討した。 ウシ歯胚より歯根部より採取した歯小嚢組織をコラゲナーゼ処理により細胞を分離培養後、α-MEM培地で継代培養した。得られたウシ歯小嚢細胞(Bovine dental follicle cell : BDFC)をascorbic acid, dexamethazone,β-glycerophosphateを含む分化誘導培地で5日間培養後、alkaline phosphatases activityとセメント質形成関連遺伝子(bone sialoprotein : BSP, osteopontin : OP, osteocalcin : OC, type I collagen : COLI)の発現をRT-PCRで調べた。その結果、BDFCは骨芽細胞と比較して、低いalkaline phosphatases activityを示した。またOP, COLIの発現は見られるものの、OCはわずかにその発現が認められ、またBSPの発現に関しては検出されなかった。以上の結果で、BDFCはその殆んどが線維芽細胞もしくは未分化な細胞集団であることが考えられた。次に免疫不全マウスへの皮下移植実験を行い、BDFCの分化能力を評価した。その結果、移植後4週間でBDFCはキャリアーであるハイドロキシアパタイトとの境界面に石灰化物を形成が観察された。またこの石灰化物は坑CAPモノクローナル抗体を用いた免疫染色によりセメント質であることが判明した。さらに興味深いことにBDFCは歯根膜様線維組織の形成能も有することが観察された。RT-PCRの結果、BDFCは移植実験による分化誘導でBSP、OCの発現が誘導され、OP, COLIを含む全てのセメント質形成関連遺伝子の発現が認められた。これらの結果よりBDFC中にはセメント芽細胞前駆体が存在することが証明された。次年度はBDFCを不死化し、セメント芽細胞前駆体をクローン化する予定である。
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