研究概要 |
オキシド酸素の電子対供与性を基盤としたN-オキシド化合物の新機能開拓を目的とし,各種キラルN-オキシド配位子を設計・合成してその不斉触媒反応への応用を検討し,以下の成果を得た。1,トリクロロアリルシランによるアルデヒドの不斉アリル化反応に有用なキラルなN-オキシド(3,3'-ジメチル-2,2'-ビキノリンN,N'-ジオキシド)の各種誘導体を合成し,それらをアリル化反応の触媒として用いることにより,本反応が6配位ケイ素中間体を経ること,不斉発現が立体環境のみならず電子的環境にも左右されることなど,反応機構についていくつかの重要な知見を得た。2,上記N-オキシド誘導体が,スカンジウムトリフラートを触媒としたエノンに対するβケトエステルの不斉Michael反応の配位子として有用であることを見出した。3,上記N-オキシド誘導体が,四塩化ケイ素によるmeso-エポキシドの不斉開環反応の触媒として有用であることを見出した。4,N-オキシドがトリクロロシリルエノールエーテルとアルデヒドのアルドール反応を触媒し,用いるN-オキシドの配位数により,生成物のsyn/anti選択性を制御できることを見出した。5,いくつかの大環状N-オキシド化合物を合成し,それらによるプロトン酸の分子認識において,オキシド酸素が内孔に向いた配座の重要性を確認した。これらの結果は,有機合成化学におけるN-オキシドの配位子としての新たな可能性を拓くものである。
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