研究概要 |
平成13年度は,申請者自身が開発した2価の銅塩を用いる2-ethynylaniline誘導体のインドールへの閉鎖反応の適応性の拡大を第一の目的として検討を行った. まず,カウンターアニオンの反応性に対する影響を調査するために,様々な2価の銅塩を用いて反応を試みた.この結果,copper triflate,copper acetate,およびcopper benzoateを用いた場合には良好な収率で閉環反応が進行したが,copper mesylateおよびcopper tosylateを用いた場合には全く反応が進行しない事が明らかになった.カウンターアニオンの酸性度が強いほど,銅原子と酸素原子のイオン結合性が強いことが既に知られている.このことから,円滑に反応が進行するためには一方のアニオンが銅原子から解離する事が必要であることが示唆され,反応機構に関する重要な知見を得る事ができた.続いて基質に関する検討を行った.スルホンアミドを用いた場合には,copper acetateが好結果を与え,アセチレン末端上の置換基が芳香環,アルキル基,および同一分子内に水酸基を持つ場合でも良好な収率で閉環体を得ることができた.カーバメートを基質とした場合にはcopper triflateが,本反応の特徴である無置換アニリンを基質とした場合にはcopper benzoateが,アセチレン末端上の置換基がアルキル基と芳香環である基質に対しては収率良く閉環体が得られたが,その他の基質では分解が競合する事が明らかになった. 第二の目的として,連続的な環化反応の開発を検討した.アセチレン末端に脱離基を持つ炭素鎖を結合させたスルホンアミドを基質として検討を行った結果,KHで窒素原子上の水素を引き抜いた後,copper triflateと処理する事で,期待通り連続的な環化反応が進行し,一挙に三環性化合物を構築することに成功した.
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