本研究では、高い抗ウイルス活性を示すユーディストミン類の効率的かつ実用的な合成手法の確立を目指して検討を行った。多くの基礎的な合成経路の探索研究を経て、まず初めに、研究代表者らが開発したオルトアルケニルチオアニリドのラジカル環化によるインドール形成反応を鍵反応として用いる合成経路の検討を行った。7員環オキサチアゼピン部分の立体選択的な構築は、ベータラクタムの渡環したオキサチアゼピン環の構築を経て高立体選択的に行うことができた。望みのチオアミドを有する環化前駆体は得られたが、残念ながらインドール骨格の構築は実現できなかった。本研究の過程において、1級アミンからN-アルキルヒドロキシルアミンへの新規変換法を見い出すことができた。 さらなる検討の結果、高ジアステレオ選択的Pictet-Spengler反応と、オキサチアゼピン骨格の新規構築法を確立することによって(-)-ユーディストミンCの全合成を達成することができた。まず、インドール部位をMacorらの分子内Heck反応による方法で得た。次に光延反応によりメチルチオメチル基で保護されたヒドロキシルアミン誘導体へと変換した。ここで、GarnerアルデヒドとのPictet-Spengler反応を行ったところ、ジクロロ酢酸存在下高ジアステレオ選択的(11:1)に望みのβ-カルボリン誘導体が生成した。オキサチアゼピン環の構築は、メチルチオメチル基のスルフリルクロリドによるクロル体への変換と、続くチオアセテートの合成、そしてメシラートを有する環化前駆体を用いた閉環反応によって行った。最後にBBr_3によりBoc基の除去とメチルエーテルの切断を行い、(-)-ユーディストミンCの全合成を完了した。
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