研究概要 |
前年度までの研究において、γ,γ-difluoro-α,β-enoatesが有機銅試薬によって還元を受け、対応するγ-fluoro-β,γ-enoatesを与えること、また本反応が一電子移動を介して進行することを明らかにし、さらに本反応をフルオロアルケンジペプチドイソスターの合成に展開してきた。本年度は、この一電子移動という点に着目し、代表的一電子還元剤であるヨウ化サマリウム(SmI_2)の利用について検討することとした。 その結果、γ,γ-difluoro-α,β-enoatesは、SmI_2-t-BuOH in THF系によって極めて容易にγ-fluoro-β,γ-enoatesに還元されること明らかにした。そして、本反応を応用することによりXaa-Gly(Xaa=amino acid)型フルオロアルケンジペプチドイソスターの合成を行った。また、本反応では中間体としてSm-ジエノラートの生成が考えられることから、この中間体のカルボニル化合物による速度論的な補足についても合わせて検討した。その結果、カルボニル化合物存在下、γ,γ-difluoro-α,β-enoatesをSmI_2で処理すればα位に置換基を有するフルオロアルケンジペプチドイソスターが効率的に合成できることを明らかにした。さらにカルボニル化合物としてホルムアルデヒド等価体を利用することで、多様な側鎖官能基を有するイソスター合成への道を開いた。本年度明らかにした速度論的条件下でのSm-ジエノラートの捕捉反応は従来にない反応であり、有機化学的にも非常に興味深いものと考えられる。
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