研究概要 |
イノラートはケテンアニオン等価体であり、求電子剤との反応生成物も反応活性種である。この特性を利用したイノラートの連続反応を検討し以下のような成果を得ることができた。 1.実用的なイノラートの合成法:ジブロモエステルにナフタレンを触媒としてリチウム金属を作用させることでイノラートを合成する方法を開発した。(以前の自らの方法の改良) 2.タンデム型[2+2]環化付加-環開裂反応による高Z-選択的アルケン合成反応:イノラートとアシルシランを反応させると完壁なZ選択性で多置換ビニルシランを合成することに成功した。このビニルシランの各種変換反応にも成功した。イノラートとα位にエーテル酸素を有するケトンを反応させると高いZ選択性で四置換オレフィンを合成することができた。生成物であるZ-γ-オキシアクリル酸は酸処理することにより容易に閉環し、ブテノリドを高収率で与えた。この反応をイノラートからワンポットで行うことも可能である。 3.タンデム型[2+2]環化付加-マイケル反応による環状化合物の効率的合成:イノラートとケトンとの[2+2]環化付加で生成するβ-ラクトンエノラートは高い求核性を有する。そこで分子内にケトンとα、β-不飽和エステルを適切な位置に配置した分子をエノラートと反応させたところ、β-ラクトンエノラートが分子内マイケル反応によって更に閉環し、縮合環を与えた。これを酸処理し加熱すると脱炭酸が進行し、多置換シクロアルケンが高収率で生成した。このタンデム反応により五,六,七員環が得られる。またマイケル反応生成物はエステルエノラートであるため求核性を有する。そこで更にアルデヒドを加えたところアルドール反応が進行した。これは三連続のカスケード反応であり、複雑な環状化合物を一気に合成することができた。 4.タンデム型環化付加-ディックマン反応を利用してCucumin Eの全合成に成功した。
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