スピン源、N-tert-butylaminoxyl(TBA)基を塩基部に導入した核酸誘導体のスピンラベル化ヌクレオシドとしての有用性の検討を目的とする。これまで合成したスピンラベル化ヌクレオシドの内、TBA基をウラシル、シトシンの6位に持つ1a及び2aを用いて相補的核酸塩基との水素結合形成がESRスペクトルに与える影響を検討した。化合物(1a、2a)の前駆体、対応するN-tert-butylhydroxylamine体(1b、2b)の糖部水酸基をTBDMS化し、同様にシリル化したアデノシンまたはグアノシン誘導体との結合定数をCDCl_3中^1HNMRを用いて算出し、ウリジン、シチジン誘導体と比較したところ同程度であった。次に1b、2bを酸化銀で酸化し、1a、2aとし相補的核酸塩基存在下ESRスペクトルを観測したが水素結合形成による変化はほとんど見られなかった。また二重鎖形成に伴うコンフォメーション変化がESRスペクトルに与える影響を検討するため1aの2'デオキシリボース型の化合物を合成し、5'-TTT TTC XCT CTC TCT-3'のXに導入した。相補的配列のDNAと二重鎖を形成し、その融解温度を測定したが、30℃と天然型に比べて10℃程低下したため、二重鎖形成によるESRスペクトルの変化は検討は断念した。次に相補鎖との二重鎖形成を妨げないanti conformationをとる2-N-tert-butylhydroxylamino 2'-deoxyadenosineの合成を行い、そのラジカル体への変換、ESRスペクトルの精査を行った。今後既に合成を行いanti conformationをとると予想されるTBA基をピリミジン環5位に持つ核酸誘導体と併せて、水素結合形成やコンフォメーション変化がESRスペクトルに与える影響を検討する。
|