スピン源、N-tert-butylaminoxyl(TBA)基を塩基部に導入した核酸誘導体のスピンラベル化ヌクレオシドとしての有用性の検討を目的とする。これまで合成したスピンラベル化ヌクレオシドの内、TBA基をウラシル、シトシンの6位に持つ1a及び2aを用いて相補的核酸塩基との水素結合形成がESRスペクトルに与える影響を検討した。1aは塩化メチレン中相補的なアデノシン誘導体存在下、ESRを測定したところアデノシンを50当量加えてもスペクトルは変化しなかったが、2aは10当量のグアノシン誘導体存在下a_N値が13から12.7ガウスへ減少した。これはA-1a間では水素結合が二つ形成されるがその電子的影響は相殺されており、G-2a間では3つの水素結合が形成され、相殺されない水素結合がacceptorとして働いたため、a_N値が減少したと考察できる。またTBA基またその前駆体であるN-tert-butylhydroxylamino(TBH)基をもつヌクレオシドのオリゴヌクレオチドへの導入を計画し、5位にTBH基をもつ2'-deoxyuridine誘導体(3a)の合成に成功した。3aの合成は5-ヨードウリジンのイミドプロトンをNaHで引き抜き、引き続きn-BuLiを用いることで、これまで低収率でしか成功していなかったlithium-iodo交換を効率良く行うことで達成した。本法はハロゲン化アルキル、カルボニル化合物等への応用も可能であった。3aのアミダイト試薬への変換、5位にTBH基をもつ2'-deoxycytidine誘導体への変換は現在進行中である。またTBH基をイノシン2位に導入した化合物の合成にも成功した。
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