研究概要 |
パラインフルエンザウイルス(phiv-1)は、おもに生後6ヶ月から6歳ぐらいまでの乳幼児が感染し、乳児肺炎や時として重篤な気管支炎を引き起こす原因ウイルスである。しかしながらインフルエンザウイルスに有効なシアリダーゼ阻害剤であるザナビル等は全く効果がなく、有効な治療法がないのが現状で世界的に早急な治療薬の開発が切望されている。これまでに申請者は、シアリダーゼ阻害剤としてアルドラーゼ酵素反応を利用したシアル酸誘導体の合成を行い、パラインフルエンザウイルスに唯一有効な2-デオキシ-2,3-デヒドロノイラミン酸誘導体と比較して30倍以上強力なシアリダーゼ阻害活性を持つシアル酸誘導体(A)を見出すことが出来た。フッ素原子は生体内において特異な挙動を示し、生物活性の増強や選択性の向上が期待されることから、先のシアル酸誘導体(A)にフッ素原子を導入した2,3-ジフルオロシアル酸誘導体の合成とそれらの阻害活性の検討を行った。その結果、シアル酸の4位にシアノメチル基(1)、カルバモイルメチル基(2)、チオカルバモイルメチル基(3)、アミジノメチル基(4)を持つ4種類の2,3-ジフルオロシアル酸誘導体を合成し、phiv-1シアリダーゼに対する阻害活性を調べた。その結果、チオカルバモイルメチル体(3)に最も強い阻害活性が認められた。しかしその値は2,3-デヒドロ体(A)に比較して低かった。今回合成した化合物の阻害活性の強さは3>2>4>>1の順であった。今後、2-デオキシ-2,3-デヒドロ骨格を基本構造にしたシアル酸誘導体の4位に脂溶性が高く、立体的に障害の少ない置換基を導入したシアル酸誘導体の合成を行いphiv-1阻害活性の向上を目指す。
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